裁判での解決例にはどのようなものがあるか探偵・興信所の被害について、これまでに、裁判所で解決した例はあるのでしょうか。
内容証明郵便の送付等、任意の交渉によって探偵・興信所とのトラブルが解決しない場合、管轄の裁判所に裁判を提起して司法の判断に委ねざるを得ません。実際に、次に紹介するような裁判例も存在します。大阪地裁平成八年一月一八日判決判例集未登載結婚を約束していた上司の尾行調査の依頼につき、探偵業者側が、二個班通常の調査員の二倍の調査員による調査。料金も二倍で調査したとか特殊機器を使用した等の主張を行い、七日間の調査料金で合計五四〇万二四〇〇円の支払いを求めた事案です。被害者は、この料金を支払う旨の「支払承諾書」を書かされています。大阪地方裁判所は、個々の具体的な事実に踏み込んで、調査依頼の事実や依頼の具体的な内容を判断して、調査依頼があったことは認定したものの、二個班での依頼の事実は否定しました。そのうえで、支払承諾書の効力も否定して請求額の四割を減額しています。主張や暴利行為に当たるといった主張が退けられている点で、問題点も指摘できます。一方で、依頼者側の、調査料を取する意図で十分な説明もせずに過剰調査を依頼させたとの口大阪地裁堺支部平成一六年和解四〇〇万円を貸した知人が行方不明になったため、六〇歳代の女性が平成一四年三月、大手調査会社本社・東京のフランチャイズ支店に所在調査を依頼し、最終的に計四六〇万円の料金を支払わされ、二カ月後、支店の代表者と連絡がとれなくなったという事案です。フランチャイザーである本社が被害者に対して二一五万円を支払うという内容での裁判上の和解が行われました。フランチャイザーの責任が追及されたケースです。■大阪高裁平成一五年和解夫を不倫相手と別れさせるよう依頼したのにまともな調査をしなかったとして、四〇〇万円あまりの費用を支払った被害者が、いわゆる「別れさせ屋」第一章Q9参照に対し、損害賠償を求めた事案です。大阪市内の調査会社が解決金一五〇万円を支払う内容で裁判上の和解が行われました。一審では、被害者の主張に対し、調査会社が反論しなかったため、請求額全額が認容されていたのですが、被告の資力が乏しく、控訴審で和解に応じたケースです。日大津地裁長浜支部平成一七年和解娘の婚約者の身元・学歴の調査に関し、調査会社側が大学中退の事実を調査することができるかどうかにつき「それは絶対大丈夫です。間違いありません」などと断言して、六三万円の調査料で調査契約を締結したところ、実際にはその事実が判明せず、かつ、不十分な調査結果しか得られなかった事案です。調査会社が契約金額の全額を返還する内容の裁判上の和解が行われました。調査会社は、任意の交渉の段階では全額返還を拒否していたところ、裁判を提起した後に、全額返還に応じてきたケースです。口京都地裁平成一八年一月二六日判決判例集未登載探偵業者の調査対象となった京都市内の女性四〇歳が、マンションの自室近くの通路配電盤の上にビデオカメラを設置され盗撮されたなどとして、調査を行った探偵事務所を営む男性に慰謝料など計五二三万円の支払いを求めた事案です。京都地方裁判所は、「女性のプライバシーが侵害されたことは明らか」として、探偵業者に五0万円の支払いを命じました。調査対象者のプライバシー侵害の有無が争点となったケースです。