家庭内のトラブルは家庭裁判所が担当する
・家庭内のトラブル解決は家庭裁判所で調停には前項で述べた民事調停のほか、家事調停というのがあります。「法は家庭に入らず」という法律の諺があります。家庭内のトラブル、家族同士のゴタゴタは、法律に照らして裁判で黒白をつけるべきではないという意味です。そのような目的で、家庭内で起きたトラブルを解決するために設けられた機関が家庭裁判所です。そして家庭内のプライバシーを守るために、非公開が原則で、トラブル解決のためには、話し合いが基本となる調停をまず家庭裁判所で行うように定められています。家庭内の事件と言えば、離婚、相続、親子の問題など数多くありますが、これらの問題について、いきなり民事訴訟を起こすことはできません。まず、家庭裁判所で家事調停を行い、第三者を交えて冷静にじっくりと話し合い、解決を目指すのが望ましく、それがまとまらない場合に、初めて訴訟を起こせる仕組みになっています。このことを「調停前置主義」と言います。また、訴訟ができない種類のものもあります。審判事項といい、子の養育費や遺産分割などは家庭裁判所が審判(決定)します(家事事件手続法別表第1・第2事件)。・家事調停では話し合いによる解決が基本となる 親の仕事を手伝い、親が寝込んでからは死ぬまで面倒を見てきたのに、他の兄弟が遺産は法律に従って等分に分けると言ってきたーという場合のような、親族、相続に関する事件は、まず家庭裁判所の調停にかけなければなりません。しかし、法律とは無縁の生活を送ってきた人にとって、調停を申し立てろと言われても、困ってしまいます。そこで、家庭裁判所では家事事件手続相談室を設け、相談員が相談に乗り、必要な手続きを指導してくれることになっています。もちろん、弁護士ではありませんので、こうすれば有利になるとかの判断はしてくれません。どこの裁判所に申し立てるか、必要な書類は、費用は、申立書の書き方は、などについて相談に乗ってくれます。家事調停も民事調停と同様に、調停委員会で調停が行われます。調停委員になる人は、弁護士や人生経験の豊富な学識経験者などです。調停委員会で、調停委員のアドバイスを受けながら、何回か話し合いを行い、妥協点が見つかれば調停は成立し、調停調書が作られ調停は終了します。この調停調書は、訴訟の場合の判決と同様の効力を持ちます。話し合いがまとまらなければ、調停は打ち切られ(不調)、調停は終了し、後は訴訟(相続事件等では審判)で争うことになります。なお、家庭裁判所が扱う事件には審判事件があります。これについては、24ページ以下で解説します。また、具体的な調停の手続きは、18ページ以下を参照してください。⭐︎ポイント家事相談室で一度どのように解決したいか相談してみるとよい。